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真辺 健太郎; 佐藤 薫; 高橋 史明
Journal of Nuclear Science and Technology, 59(5), p.656 - 664, 2022/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Nuclear Science & Technology)内部被ばく線量は、評価対象の体格特性に依存することが知られている。標準的コーカソイドの体格特性に基づく人体モデルを用いて評価された国際放射線防護委員会(ICRP)の線量係数を日本人に適用するにあたっては、コーカソイドと日本人の体格特性の違いによる線量係数の変動幅について把握しておくことが重要である。本研究では、平均的成人日本人モデルに基づく既存の比吸収割合データ(SAF)に対しICRP 2007年勧告に完全に準拠した最新の線量評価手法に合致するよう追加計算を伴う修正を行うとともに、平均的な日本人体格特性を反映した実効線量係数を評価し、ICRPの線量係数と比較した。その結果、8割程度の摂取条件については差違が10%以内となった。ただし、一部の摂取条件では、臓器質量の違いや胸腔周辺の皮下脂肪量の違いにより、40%程度変動することが確認された。本研究により得られた知見は、ICRPの線量係数を異なる体格特性を持つ集団に適用する際に有用である。なお、本研究で整備した日本人SAFの電子ファイルは付録として公開される。
海老原 健一; 鈴土 知明
Modelling and Simulation in Materials Science and Engineering, 26(6), p.065005_1 - 065005_10, 2018/09
被引用回数:4 パーセンタイル:20.17(Materials Science, Multidisciplinary)照射誘起粒界リン偏析の見積もりは原子炉圧力容器鋼の脆化を評価する上で重要な要素であるが、粒界へのリン移動の物理的過程は依然として不明である。このことから、分子動力学を用いて3(111)対称傾角粒界へのリン移動を分子動力学シミュレーションによって評価した。結果として、粒界近傍1nmの範囲で、自己格子間原子が粒界に押し出されることで、鉄-リン混合ダンベルのリン原子と八面体格子間リン原子が置換型原子になることを見出した。空孔-リン複合体も解離し、空孔はリン原子を引きずることなく粒界に吸収された。この結果は、従来考えられている偏析プロセスとは異なることから、それについて新しい視点が必要であると示唆している。
佐藤 薫; 高橋 史明
保健物理, 52(4), p.247 - 258, 2017/12
放射線防護における重要な指標となる臓器線量は、人体モデルとして標準コーカサス人体格のICRPレファレンスファントム(男性: RCP-AM、女性: RCP-AF)を用いて導出する。一方、成人では、日本人の体格はコーカサス人よりも小さいため、これまでに成人日本人の平均的な体格を持つファントムJM-103(男性)及びJF-103(女性)を構築し、これらをPHITSと組み合わせた線量計算により、体格差が線量の変動に与える影響を解析してきた。一方、成人日本人の体格は幅広い分布を持つため、今回新たにJM-103及びJF-103の胸囲、腹囲、臀囲を成人日本人平均値に対して標準偏差のステップで変化させることで、各性について8種類の体格のファントム(男性: DJM、女性: DJF)を構築した。これらのファントムを用いた放射線挙動計算により、光子外部被ばくに対する臓器線量を解析した。この解析により、0.3MeV光子のISO照射条件について、日本人の約9割が含まれると想定される体格を模擬したファントムによる臓器線量は、RCP-AM及びRCP-AFによる結果と10%の範囲で一致すること等を明らかにした。
海老原 健一; 渡辺 正
日本機械学会第14回計算力学講演会講演論文集, p.579 - 580, 2001/11
密度の大きさによって区別される二相間の水平界面の挙動を非理想気体に対する格子ボルツマン法によってシミュレーションした。高密度相上の低密度相に対して水平方向の運動量を与えることによって両相関に速度差を生じさせ、界面形状の変化を観察した。両相の速度差がある値に達した時、界面が不安定化し、さらに速度差が増大すると大きな波が発生した。また、界面の不安定さは、理論解析とほぼ一致していた。
not registered
PNC TJ1603 97-002, 66 Pages, 1997/03
動力炉・核燃料開発事業団東海事業所では、体内放射能の定量のため鉄室内に相対検出効率61%のHPGe検出器が2台設置されていて、ヒューマン・カウンターとして使用されている。得られた測定結果から内部被爆線量を評価するためには検出効率の校正が重要である。この校正のために水ボックス・ファントムを用いているが、体格補正は行われていない。しかし、異常時には個人の体格情報に基づく評価が必要で、特に男女間や成人と子供などのように体格が大きく異なる場合には大きな差をもたらす。この様な観点から、体格による検出効率補正を必要としない-同時計測法による放射能絶対測定法を体内放射能測定に適用するため、その基礎研究を行った。複数の60Co線源および46Sc線源を作製し、4-同時計測法により崩壊率を決定し、これらの線源を用いて-同時計測法により絶対測定を行った。60Coの場合、20cm程度までの線源-検出器間距離では、10-80kBqの放射能を10%以内の精度で決定できた。一方、複数の線源を幾何学的効率が異なるように分布させた場合でも、実際の値よりも測定値が小さく評価されるが、配置を考慮すれば10%程度の系統的ずれ以内で測定しうることが判明した。46Scの場合にも60Coと同等の結果が得られ、この方法が一般的に適用可能であることが証明された。
not registered
PNC TJ1603 96-003, 51 Pages, 1996/03
動力炉・核燃料開発事業団東海事業所では、体内放射能の定量のため鉄室内に直径50mmのHPGe検出器が2台設置されていて、ヒューマン・カウンターとして使用されている。これらの検出効率の校正は水ボックス・ファントムを用いて行われているが、体格補正は行われていない。しかし、異常時には個人の体格情報に基づく内部被曝評価が必要で、特に体格が大きく異なる場合には重要である。この様な観点から、体格による検出効率補正を必要としない-同時計数法による放射能絶対測定法を体内放射能測定に適用するため、60Coを用いてその基礎研究を行った。放射能既知の複数の60Co線源を作製し、絶対測定を行った。その結果、15cm程度までの線源-検出器間距離では、10-100kBqの放射能を20%以内の精度で決定できた。一方、幾何学的効率が大きく異なる分布をした場合には、線源の放射能よりも測定値がかなり小さく評価されることが判明した。
佐藤 薫; 高橋 史明
no journal, ,
放射線防護における線量評価の基礎となる臓器線量は、標準コーカサス人の体格を持つICRPレファレンスファントム(男性: RCP-AM、女性: RCP-AF)を用いて導出する。成人では、日本人の体格はコーカサス人よりも小さいため、これまでに成人日本人の平均的な体格を持つファントムJM-103(男性)及びJF-103(女性)を構築し、これらをPHITSと組み合わせた線量計算により、体格差が線量の変動に与える影響を解析してきた。一方、成人日本人の体格も幅広い分布を持つため、今回新たにJM-103及びJF-103の胴体周囲長(胸囲、腹囲、臀囲等)を成人日本人平均値に対して標準偏差単位で変化するように修正することで8種類の体格の男女のファントムを新たに構築した。この構築した体格の異なる成人日本人ファントムを用いて、RCP-AMやRCP-AFに基づき導出される光子外部被ばくに対する臓器線量を日本人の線量評価に適用した場合の影響を解析した。この解析により、0.3MeV光子のISO照射及び0.6MeV光子のROT照射条件について、多くの日本人が含まれると想定される胴体の周囲長を持つ体格を模擬したファントムによる結腸の線量の計算結果は、RCP-AM及びRCP-AFによる結果と10%の範囲で一致すること等を明らかとした。
佐藤 薫; 高橋 史明; 古場 裕介*; 小野 孝二*; 吉武 貴康*; 長谷川 隆幸*; 勝沼 泰*; 笠原 哲治*; 奥田 保男*; 仲田 佳広*; et al.
no journal, ,
国内での医療機関におけるCT診断による患者の被ばく線量計算での適用を目的として、原子力機構が放射線医学総合研究所(現:量子科学技術研究開発機構)等との共同研究の下で開発したシステムWAZA-ARIv2が2015年1月以降、量子科学技術研究開発機構の公開サーバーで運用されている。WAZA-ARIv2では、成人については平均的体格に加えて、胸囲, 腹囲, 臀囲の平均値に対して-2, +2, +5の変動を持たせた3つの体格の被ばく線量計算が可能である。一方、同じ成人でも身長は分布を持つため、発表者が開発した体格変形ファントムのボクセルサイズを高さ方向については-1613%、水平方向については-105%増減させることで、身長を150, 160, 170, 180, 190cmにBMIを18, 22, 28, 37に調整し、CT診断に伴う臓器線量を解析した。その結果、肺及び唾液腺の線量は身長の増加に伴って減少した。また、BMIの増加に伴う肺線量の減少率は、唾液腺線量の減少率よりも大きかった。以上の結果は、唾液腺が位置する頭部の皮下軟組織厚は、肺が位置する胸部よりも薄く、CT装置からの放出X線に対する遮蔽効果が小さいことが原因である。
佐藤 薫; 高橋 史明; 古場 裕介*; 小野 孝二*; 吉武 貴康*; 長谷川 隆幸*; 勝沼 泰*; 笠原 哲治*; 奥田 保男*; 仲田 佳広*; et al.
no journal, ,
国内でのCT診断による患者被ばく線量の計算を目的として、原子力機構が放射線医学総合研究所(量子科学技術研究開発機構: QST)等との共同研究の下で開発したwebシステムWAZA-ARIv2がQSTの公開サーバーで運用されている。WAZA-ARIv2では、日本人平均身長を有するBMIが18, 22, 28, 37相当の成人男女ファントムの臓器線量データに基づいた評価が可能である。今回、我々は、任意体格の成人患者の線量計算に対してもWAZA-ARIv2を適用できるように機能を拡張するため、開発した体格変形ファントムのボクセルの高さ及び水平方向の長さを調整することで、成人日本人の約99%が含まれる体格範囲(男性: 153-187cm及び41-89kg、女性: 140-170cm及び33-73kg)を模擬し、この範囲の体格変化が臓器線量に及ぼす影響を解析した。その結果、全身撮影条件で男性の肺線量は、身長の変動に関係なく4%以内となる一方、体重が40kgから90kgに増加した場合の減少率は36-47%であった。同様の傾向は甲状腺でもあり、体重変化に伴う皮下軟組織厚の変化が線量に対して大きな影響因子になることがわかった。
佐藤 薫; 佐藤 大樹; 高橋 史明; 古田 琢哉
no journal, ,
放射線防護を目的とした線量評価の基礎となる臓器線量の標準データは、標準欧米人の体格を持つICRPファントム(男性: RCP-AM、女性: RCP-AF)を用いることが規定されている。一方、成人日本人の体格は欧米人よりも全般的に小柄であり、かつ変動幅を持つ。そのため、国内の放射線防護基準の策定や計画立案に対して、RCP-AMやRCP-AFを用いて導出された臓器線量を適用する場合、日本人の体格とその変動幅の考慮が重要となる。これまでにわれわれは、光子外部照射に対して、成人日本人の体格やその変動を考慮した線量評価を行った。本研究では、光子と同様に透過性の高い中性子の外部照射について、体格変動が臓器線量に及ぼす影響を解析した。この解析には、成人日本人ファントム(JM-103及びJF-103)の身長を一定にした条件の下、胴体の周囲長について、平均値から標準偏差のステップで変化させることにより作成した3種類の体格の男女ファントムを利用した。解析の結果、3MeV中性子の回転照射条件について、多くの日本人が含まれると想定される胴体の周囲長を持つ体格を模擬したファントムによる結腸線量の計算結果は、RCP-AM及びRCP-AFによる値と20%の範囲で一致すること等を明らかにした。
佐藤 薫; 古田 琢哉; 高橋 史明
no journal, ,
原子力機構では、日本人体格特性を考慮した線量解析での活用を目的として、成人日本人ポリゴンファントム(男性: JPM、女性: JPF)の開発を進めており、その全体概要を令和元年12月の第2回日本放射線安全管理学会・日本保健物理学会合同大会において報告した。その後、JPM及びJPFの姿勢変化機能の高度化や臓器質量等の日本人平均化等の改良を進めた。姿勢変化機能の高度化では、四肢の筋肉とリンパ節をそれぞれ12領域,8領域に細区分した後、肩,肘,手首,大腿部,膝,足首の6関節に動点を設定した。この際、ボーン機能を用いて、関節の回転角度に応じて各細区分領域がポリゴン交差を回避しつつ適切に変形するように連携させた。これにより、姿勢変化後のJPM及びJPFのデータを、四面体要素化処理や放射線輸送計算へ直接適用することを可能にした。また、臓器質量等については、解剖学的データに基づく画像処理により日本人平均値に調整した。以上により、JPM及びJPFを利用することで、多様な作業姿勢を考慮し、日本人の体格特性を反映した線量評価が可能になった。当日の発表では、JPM及びJPFの改良の他、姿勢変化による臓器線量の計算結果も報告する。